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横浜市中心地から電車で5分ほどの黄金町は、戦後、売春や麻薬を扱う違法飲食店が軒を連ねていた。2008年から開催された「黄金町バザール」は、この地域をアートによって変えようとするまちづくりの試みで、その中の活動のひとつにアーティストを国内外から招待し、この街に滞在しながら作品を制作し地域に開く「アーティストインレジデンシャル」がある。この計画は「黄金町バザール2015」の企画として開催されたコンペティションのうちのひとつ、「アーテストのためのレジデンシャルスペース」の当選案である。
開口部のない元々飲食店だった1階10坪ほどのスペースの改装となる。アーティストレジデンシャルという特殊な用途と、抑えられた工事費などの要件から、誰もがわかりやすく簡単な仕組みのものをと考えた。
トイレと倉庫以外を解体し、床と壁を曲面状につなげ、床・壁に一体的な防水を施し、シャワーと排水口を設け、部屋全部がバスタブのような洗い場のような不思議な空間に仕上げた。外部は手を加えず、浴室でよく使われる照明とタオル掛けのみを設置した。
浴室は住空間の中においては、完全防水パッケージされた自由で異質な空間ともいえる。汚れを気にせずに洗い流せるこの空間が、アーティストのアトリエとしてもインスタレーションや展示の場としても、想像と表現の幅を拡げるものになればと思っている。かつては何でもアリだった黄金町のある種の自由さや特異さを、新しいかたちでこのスペースに還元したいと考えた。(2019年の建物取り壊しにより消滅)
所在地:
神奈川県横浜市
主要用途:
アトリエ・ギャラリー
施工:
有限会社 成岡
工事期間:
2015年9月
主体構造:
木造2階建ての1階部分
延床面積:
33.82㎡
床:
モルタル金コテの上エポキシ樹脂防水
壁:
モルタル金コテの上エポキシ樹脂防水
天井:
フレキシブルボード突付け
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